学会について

文化看護学会設立趣意書

 人々の暮らしのあり方や健康の捉え方は、それぞれの文化背景により異なり、近年の価値観の多様化によって、ますます複雑さを増しています。また、人々の専門職への期待や専門職自身の抱く役割意識は、それぞれの文化背景に影響をうけ、多重構造を呈しています。これに伴い、看護の領域では、その対象者、および看護職者自身のもつ文化背景への感受性を高め、人々の健康にかかわる生活を支援するために有効な援助方法を文化という視点を重視して明らかにしていくことがますます重要になると考えます。

 そのためには、人々のもつ文化に根ざした有効な看護のあり方を研究開発する必要があります。その際には、文化のあり様に深くかかわる様々な学問領域と協働し、同時に国際比較的な視点をもち、現象を多角的に検討していくことが重要と考えます。このことによって、世界中に暮らすあらゆる人たちが真に満足できる看護を根拠づける看護学の発展に寄与することができると考えます。

 千葉大学では、平成15年度から19年度にかけて「21世紀COEプログラム 日本文化型看護学の創出・国際発信拠点」に取組み、日本文化に根ざした様々な看護実践知の解明に向けて、国内外の研究者・実践者とネットワークを結び、国際・国内比較分析、学際的分析および実践検証・評価研究を行ってきました。そしてその結果、文化を考慮して看護を実践することは、質の高い看護を提供するうえでの鍵となること、さらにそれは、日本文化における看護の質の充実にとどまらず、世界のそれぞれの地域においても同様に質の高い看護を具現化させる普遍的方法論であることが見出されました。
以上のことから、文化に根ざした看護学―『文化看護学』として、学際的かつ国際的な視点から、看護における実践、教育、研究の各領域を充実・発展させる学術組織として「文化看護学会」の設立を提案いたします。

 文化看護学会は、世界の各地に生きる人々がもつ文化の多様性と普遍性を探求し、それらを反映した看護方法を研究開発し、看護学の発展に寄与することを目的とします。本学会では、看護の実践・教育・研究に携わる方々ならびに人々の暮らし、健康、生活の背景となる文化に深く関連する学問領域の方々と広くネットワークを形成し、各分野に分散している英知を結集し、世界各地に生きる人々に提供される看護実践の向上に貢献していく、新しい看護学の潮流を生みだし浸透させていくこと目指します。

 本学会の設立の趣旨をご理解・ご賛同の上、皆様のご参加を切にお願いする次第です。

2007年10月

文化看護学会設立発起人:

石垣和子 井出成美 岩﨑弥生 遠藤俊子 大室律子 岡田 忍
荻野 雅 佐藤由美 佐藤禮子 清水安子 高橋久一郎 田邊美智子
張 平平 陳 東 永井優子 中村伸枝 野口美和子 春山早苗
平山朝子 舟島なをみ 前原澄子 正木治恵 眞嶋朋子 宮﨑美砂子
森 恵美 吉田千文